「アンセル・アダムズの写真術 The NEGATIVE」amazon

アンセルアダムズのゾーンシステムは、デジタル時代にも通用するか?

アメリカの自然写真家の巨匠アンセル・アダムズ(Ansel Adams:1902ー1984)
は、3冊に分かれたの写真術の教科書を書いています。1冊目が「The NEGATIVE」2冊目が「The PRINT」3冊が「The Example」というタイトルです。「The Example」は、作例集ですね。

重要なのは、1冊目の「The NEGATIVE」と2冊目の「The PRINT」、もっと言えば1冊目の「The NEGATIVE」です。アンセル・アダムズの写真理論の根底がここにあります。

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アンセル・アダムズの作品はほぼモノクロ写真です。モノクロ写真をやった事がある人なら分かると思いますが、モノクロの写真家は、必ずと言っていいほど、自分でフィルムの現像をしました。アナログ時代(フィルム時代)の写真では、最良のフィルムを作ることが最大の目的と言われ、プリントの技術(印画紙に露光させ、現像、定着する技術)は、フィルムのミスをカバーするすることに過ぎないとも言われました。ですので、著名な写真家は、時には優秀なプリンター(ネガから写真のプリントを作るプロ)に、プリントを委ねることがありますが、しかし、ネガの現像まで任せてしまうことは希ではないでしょうか?

なぜなら、ネガの制作は撮影時点から始まっているからです。どのような被写体を、どのような光の下で、どのような露出(絞りとシャッタースピード)で、フィルムに記録したか。そのフィルムを、どんな温度で、どのくらいの時間をかけて、どんな薬剤で現像するか。その組み合わせで、ネガに定着する画像が決定されてしまいます。まさに写真がケミカルだった時代です。

ネガにわずかでも残っている画像は、プリントの際に画像をコントロールすることで、撮影者のイメージに近いプリントにすることが可能です。しかし、ネガに存在しない画像は、いかなるプリント技術を用いても画像をつくりだせない訳です。逆に言えば、完璧なネガであれば、プリントの際に得に技術を凝らす(補正する)必要がないことになります。

そうした思い通りの画像を、ネガに定着させるための考え方をアンセル・アダムズは、「ゾーンシステム」として確立しました。1冊目の「The NEGATIVE」は、その方法や考え方をまとめた教科書と言えます。「ゾーンシステム」とは、「メディアの特質をとらえてイメージを定着させる方法」です。

光線(照明)、レンズ、フィルム、絞り、シャッタースピード、フィルム現像液、フィルム現像温度、フィルム現像時間、攪拌の仕方、印画紙、印画紙への露光時間、印画紙の現像、定着、水洗い等の要素が組み合わさってプリント写真はできあがります。(被写体、構図、シャッターチャンスは撮影者に寄るものとします。)

では、この複雑な組み合わせの結果を判定するための基準をどうするのか?その考え方として「ゾーンシステム」があります。言ってみれば楽器のチューニングメータのようなものです。いろいろな楽器がアンサンブルするにあたっては、基準となる音程が必要です。

「アンセル・アダムズの写真術 The NEGATIVE」ゾーンシステム解説ページ

「ゾーンシステム」では、0〜Xまでの11階調のモノクロ階調がチューニングメータの役割を担います。0は完全な黒、Xは完全な白となります。そして中間にあるVゾーンが、グレーススケールの基音となります。

このVゾーンを、撮影イメージのどこに「置く」か、その時、他の画像の部分はどのゾーン「くる」かを見極めます。そして、意図するイメージに近づけるためには、ゾーンをコントロールするために、絞りとシャッタースピードを決定していきます。「ゾーンシステム」は非常に簡単な概念としては、このようなものです。

ひとつ付け加えれば、アンセル・アダムズは「f64」というグループに属していたことからも分かるように、鮮明なピントを得るために極力絞りを大きく(絞り込む)するというスタイルを取っていました。ということは自分の中での基準が、ひとつとてもシンプルだったと言えます。

アンセル・アダムズは、この本を出版した時点(1981年)で、写真はいづれデジタルの時代になっていくだろうとし、そして「ゾーンシステム」は、デジタル写真においても有効な考え方になると書いています。

アンセル・アダムズの予想どおり、1980年代後半から瞬くまに、写真はアナログからデジタルへ移行して行きました。フィルムは撮像素子とメモリ、印画紙はプリンタやモニタに置き換わりました。そして、現像や焼き付けの工程は、ソフトウェアによるROW現像や格好作業がそれに該当します。

ーーー つづく。